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97年に登場して以来、累計2,800万本を売り上げた『エドウイン』が誇る名作ジーンズ「503」。時代ごとに常に新しい技術を盛り込みながら進化を続ける同作の魅力を解説したい。
1997年にEKIAN加工を世界で初めてジーンズに用いて登場した『エドウイン』の「503」。課せられたテーマは“常に最新の技術やトレンドを取り入れながら、日本人の体型やライフスタイルにマッチしたジーンズを生み出すこと”。そのため、これまでにも幾度もモデルチェンジを繰り返してきており、世代によって「503」に対するイメージは異なるはずだ。もともと「503」という品番はレギュラーストレートを表すものだったが、現在ではシルエットのバリエーションも拡充。従来の枠組みに囚われない自由な発想のもと、日本人にとってジーンズの最適解を時代ごとに提案し続けている。そして2019年には使用するデニム生地も変更となる大幅なモデルチェンジを敢行。さらに進化を果たしてみせたのだ。
新生「503」の魅力を知るために、まずはその歴史についておさらいをしたい。液体アンモニアによって綿を膨らませることで滑らかな肌触りやしなやかさを実現するEKIAN加工が施された初代が登場したのは1997年のこと。従来、EKIAN加工は形態安定シャツなどに使われていたが、「503」は世界で初めてこの技術をジーンズに応用したのだ。結果として、コンフォータブルなはき心地と美しい濃紺のブルーを備えた1本として、爆発的なヒットを記録する。
そして、なぜ「503」でEIKEN加工を採用したかを知るためにはさらに歴史を遡る必要がある。たどり着いたのは1963年のこと。実はこの年に『エドウイン』は消費者の“ゴワつかないジーンズが欲しい”というニーズを読み取り、いち早くワンウォッシュのジーンズをリリースしているのだ。1963年といえば米国においてプレシュリンクのジーンズを開発されたのとほぼ同時期であり、今では定番のウォッシュ加工も当時では最先端の技術。“快適なはき心地”や“ジーンズらしい濃紺”といった日本人のニーズを満たすべく常に最新の技術を盛り込んできたのは、「503」に限った話というよりも『エドウイン』ブランドのジーンズに通底するコンセプトといえそうだ。
「503」は常に最新であることを求められる。そのため、これまでに幾度もバリエーションの拡充やリニューアルを行ってきた。代表的な例では、新開発の生地とサイドシームをなくすことで抜群のはき心地を実現した2010年の「503 ZERO」の登場、2012年のシルエット拡充、2016年の綿100%ながらナチュラルストレッチ性を備えた生地への変更等が挙げられるだろう。一般的に定番品の仕様が変更になる場合はコストダウンや生産効率向上のために生産背景が海外移転するといったケースも多いが、「503」の場合はその例には当たらない。OEM生産が一般的な昨今のデニム業界においても『エドウイン』はファクトリーブランドを貫いており、そのフラッグシップモデルである「503」は幾度モデルチェンジを経てもMADE IN JAPANを守り続けているのだ。
常に進化を遂げてきた「503」だが、2019年に行われた変更はまさにフルモデルチェンジの名に見合う大幅なアップデートだった。“最新技術が盛り込まれた、日本人のためのコンフォータブルな本格ジーンズ”という同作のコンセプトにふさわしい、新生「503」について、主な変更点を解説したい。
シルエット:性別を超え、さまざまな世代にフィットする3シルエット展開
体型が一人ひとり異なることはもちろん、世代や着こなしによって求めるシルエットも違う。今回のアップデートで従来の「503」らしいレギュラーストレートに加えて、膝下からスッキリとしたテーパードをかけたスリムテーパード、クラシックでゆったりとしたシルエットのルーズストレートの3種類をラインアップ。年齢・性別・体型を問わずにフィットする必要十分なバリエーションが出揃った。
素材:糸からリニューアル。新開発の素材が、圧倒的なはき心地を生み出す
今回のリニューアル最大の変更点が、従来の「503」の特徴であったEKIAN加工をやめ、繊維メーカーのクラボウとともに新開発したデニム生地を採用したこと。新開発のデニムでは、3本の組糸を撚り上げて作る精紡交撚糸を経糸に採用している。それによって表面はEKIAN加工と同じく滑らかでシャープな肌触りを再現。程良い弾力感と伸縮性を実現しつつハリやコシが生まれて強度も高まり、クリアで色艶のあるインディゴブルーを実現した。“スムースなはき心地と濃紺のワンウォッシュ”という「503」の美点を残しつつ、さらに機能面でも改良したのが今回の新開発デニムなのだ。
色:こだわりのインディゴブルーは大前提。「503」の可能性を広げるカラーバリエーション
インディゴの濃・中・淡のウォッシュバリエーションに加え、ブラックジーンズやホワイトジーンズ、チノーズ風のカーキやハードウォッシュが施された淡色ブルーがラインアップに拡充されたのも今回のアップデートの特徴。いずれのカラーも前述の新開発デニムが使用されており、新生「503」ならではの風合いを楽しむことが可能だ。
メンズファッションにおける定番中の定番、洗いざらしの白Tシャツ1枚でサマになるのが「503」の真骨頂だ。『エドウイン』スタッフの着こなしを例に、バリエーションごとにシンプルなスタイリングのコツを考察したい。
レギュラーストレート:97年式の白Tシンプルコーデ
ワンポイントロゴ入り白Tに、レギュラーストレートを組み合わせたシンプルコーデ。『アディダス』の「スーパースター」や『カシオ』の「Gショック」、そして『エドウイン』の「503」という組み合わせは同作が登場した97年当時の定番中の定番コーデだ。30代男性にとっては懐かしく、馴染み深い。
着用モデル 503 レギュラーストレート 中色ブルー
スリムストレート:ビッグシルエットのトップスをスッキリと
トレンド継続中のビッグシルエットが効いた袖プリントのロンT、ガチャベルトなどの90年代エッセンスの組み合わせに合わせたのがスリムストレートのホワイト。ややゆるくはきこなすことで、スッキリとクリーンに見せつつも力の抜けたストリート感をプラスした。ベルトと靴の色をマッチさせ、ネオンカラーとホワイトジーンズのコントラストを意識するなどカラーコーディネートも非常に巧みだ。
着用モデル 503 スリムストレート
ルーズストレート:2トーンでまとめたデニム・オン・デニム
新生「503」のルーズストレートは、あえて2~3サイズほどオーバーにはくのもアリだ。難易度の高いデニムセットアップのコーディネートも、インディゴとゴールデンブラウンの2色にカラーを絞ることでまとまり感をプラスできる。そのインディゴもトップスとボトムスでトーンを変えることで、カラーパレットに奥行きを生み出した。
着用モデル 503 ルーズストレート 濃色ブルー
執筆/廣田俊介
構成/TASCLAP