今やブーツカットデニムは“バイカー”や
“ヒッピー”だけのものではないのです。
裾が大きく広がる特徴的なシルエットのブーツカット。
その個性的な佇まいは1970〜80年代のヒッピースタイルや、
ブーツとの親和性の高さからバイカースタイルなど、
ある意味確立されたスタイルで合わせる印象が強いアイテムでした。
特に現代では年齢を重ねるにつれてストレートやスリムテーパードといった
すっきりとしたシルエットのものが広く好まれていますが、
実は今こそオトナに提案したい一本なんです。
そもそもブーツカットって?
裾が広がりのあるタイプのシルエットで
主にブーツを履くために膝からなだらかに広がっていくもの。
「フレア」や「ベルボトム」との違い
フレア :
裾が広がったシルエットの総称。
1970年代を代表するデニムの一種。
ベルボトム :
より極端にコントラストをつけて
大胆に足元への広がりを持たせた
シルエット。
そもそもブーツカットって?
元々、裾の広がったシルエットを「フレア」と定義したのが1970年代。
そのため、裾が広いことの総称としてはフレアと呼ぶことが正しいとされています。
その中で、ヒッピースタイルに代表される極端に裾を広げたスタイルを「ベルボトム」、
ブーツを履くための裾の広がりを目的としてものを「ブーツカット」と呼ぶようになりました。
「ブーツカットデニムといえばやはり
LeeとWrangler」
歴史的観点から、そして世界的な知名度からでもブーツカットといえば
「Lee/リー」と「Wrangler/ラングラー」は語るに欠かせないブランド。
きっとデニムに触れてきた人であれば漠然と、ふんわりと
そんなイメージは持っているように思いますが、
ここで少しだけそれぞれの歴史背景について触れてみましょう。
ブーツカットデニムの
原点的存在
70年代を代表する
カウボーイデニム
ヘンリー・デビット・リーがカンサスシティにて1889年に開業した食品と雑貨の創業卸商が起源である「リー」。当時のアメリカは荒野がいたるところにあり、厳しい労働条件のもとで働く人々にとって労働衣料品は欠かすことはできず、同社でも開業にあたり取り扱うことは当然のことでした。何よりも丈夫な衣料を求め、アメリカ東部より胸当て付きのオーバーオールを仕入れ、これが大ヒット。すぐに売れ筋商品となり、自身でもワークウェアの製造を決意。そして1911年にオーバーオール、ワーク・ジャケットが誕生し、1924年には11オンスデニムを使用したカウボーイパンツが登場します。多くの本当のカウボーイたちに愛用されたこのカウボーイパンツこそがのちに「Riders」と命名される伝説のブーツカットデニムで、現在でもそのルーツを感じさせるアイテムが人気を博しています。
アメリカが誇る
ファーストジーンズ。
プロのカウボーイたちが
こぞって愛した
ラングラーの起源は1904年、親会社であるブルーベル社の基盤がアメリカ・ノースカロライナ州で誕生したところから始まります。1936年には世界最大のワークウェア会社へと成長を遂げ、約半世紀の間に培ってきたノウハウをもとに1947年「ラングラー」を起こすことに。その第一号モデルが現在でも永遠の定番であり続ける11MWです。その後、世界初となるジッパーフロントのブルージーンズ13MWZを発表することで、カウボーイたちの絶大な人気を呼び、特にプロロディオのカウボーイたちの間では超のつく大人気を博しました。ラングラーがプロのカウボーイたちに愛されてきたのは彼らの動きを考え尽くしたシルエット、そしてファッションアイテムとしての美しさを両立したことにあります。身体にフィットしながらも長時間穿いていても快適であること、また見た目のスタイリッシュさやスタイリングの合わせやすさは現代においても人気が冷めない要因です。
「ブーツカットデニムを
今、履きこなすには」
昨今のシルエットトレンドはストレートやスリムテーパードが主流。
そのため、よく「ブーツカットって古いよね?」、「合わせるのが難しい」、
「コテコテのスタイルにしか似合わなそう」といったお声をいただきます。
ですが、決してそんなことはないんです。
日常的に、そしておしゃれにブーツカットを穿きこなす方々の
リアルなスタイルサンプルを見ていただければ魅力共々伝わるはずです。
高橋優太さん (36歳/178cm) 古着店オーナー
東京都の代々木上原に構える古着店「Color at Against」のオーナー。数々のアパレルを経験したのちに2013年に同店をオープン。アウトドアブランドを中心に店主の趣味嗜好を体現したラインナップは世代を問わずファンを抱えている。1980〜2000年代のアイテムを中心に買い付けを行っている。
好みのアメリカンスタイルを
オトナ仕様のブーツカットで体現
「Leeは学生時代にデッドストックで200番台を買ってリジッドから育てたイメージが強いですね。70年代のRidersも通ってきましたが、自分はヒップホップやスケート文化を好んでいたのでストレートばかりでした。今回、ブーツカットということで新鮮な雰囲気になるかなって思いましたが、足元のルーズ感はとてもいいですね。コーディネートのイメージは“80年代の黒人”。70年代の親父のデニムを借りたアメリカの青年という感じです。年齢を重ねてきたこともあってダボダボすぎるデニムとの距離感が掴めなくなってきたので、ちょうどいい塩梅で穿けることが新しい発見でした」
AMERICAN STANDARD 102
ブーツカットジーンズ
70年代にカウボーイブーツの流行をリードしたブーツカットジーンズ「102」を現代的にリファインした一本。
股上は深めで、腰と太ももは程よいフィット感があり裾に向かって緩やかにフレアーするシルエット。
腰まわりがすっきりしたデザインなので、脚を長くきれいに演出してくれます。
雨宮雄三さん (31歳/166cm) 美容師
東京を中心に店舗を構える超有名ヘアサロンOCEAN TOKYO。その中のOCEAN TOKYO OVERで2019年より代表を務めている。専門学生時代より多くのファッション紙で私服スナップを撮られるなどファッションアイコンとしても有名。男らしくルードなスタイルに同世代のファンも多い。
ブラック軸のスタイリングで
ワイルドな佇まいを意識
「ブーツカットは好きで昔から愛用していました。穿き始めたのは専門学生時代。学校が原宿にあったのもあって、古着で自分に合ったものを探していましたね。当時はAラインシルエットが流行していて、“レッドウイングにブーツカット”がお決まりでした。身長のこともあったのでこのスタイル、テイストが自分に合うんだなって思ったので軸はずっと変わっていませんね。今日のポイントはブラック。30代になってからブラック率が高くなったのと、革ジャンとブーツカットっていう男くさいスタイルがまた気になっていたので。Leeのこのモデルを穿くのは初めてだったんですけど、シルエットがよくて気に入りましたね。あとはツイル生地のオールブラック感も好みです」
AMERICAN STANDARD 202
ベルボトムパンツ(ツイル)
アメリカ海軍の制服が発祥とされているベルボトム。
70年代にヒッピーやミュージシャンから愛された202ベルボトムをリファインしたモデル。
股上を深めに設定し、太ももから膝にかけてフィット、そして裾に向かって大きく広がったメリハリのあるシルエットが魅力です。
實川治徳さん (52歳/176cm) アイウェアライター
ヴィンテージアメリカンの復刻を手掛けていたブランドで店長や広報などを経験。そこで得たモノの良さや作り手の思いを伝えることに魅力を感じ、2000年にライターとして独立。デニムやミリタリー、ワークウェアを中心に背景を含めたライティングを心がけ、現在ではアイウェアにも注力をしている。
20年ぶりのブーツカットは
新鮮味を堪能できるツイルで
「Leeは101をずっと穿き続けています。イチから育て上げるデニムは僕にとって101で、これまで何度と穿き育てたことか…。今回、せっかくなのでこれまで穿いてきたものをいくつか持参しましたが、どれも思い出があるので自分でアーカイブにしていますね。最初に穿いたのは高校生くらいで、まわりと差別化したくって穿くように。ブーツカットは20年ぶりくらいかな。20代後半でバイクを乗るようになってから選んでいました。久々に足を通してみてやっぱりいいなと。少し懐かしさもあり、若返ったように感じますね(笑)。普段は基本的にデニムを選ぶのですが、あえて今回はツイル生地のカーキを選んでみました。普段のアウターも新鮮に映りますね。あと、ブーツは同系色を選んだのですがそれも好相性。ツイルとスエードの素材感のマッチもいい感じでした」
AMERICAN RIDERS 102
ブーツカット(ツイル)
本物を追求した現代のスタンダードデニム。
映画『理由なき反抗』でジェームス・ディーンが着用したことで一躍有名になった代表作101Zをアップデートした一本。
素材には日本綿布の13.5オンスのツイル素材を採用し、ドライタッチなシワ感を製品に施しています。
$yo-taさん (29歳/168cm) ブランドデザイナー
16歳からアパレルで勤務。26歳よりLeeの直営店で3年ほど勤務。昨年、自身のファッションブランドである「GREED GLORY」を立ち上げ、4月にはアトリエ兼ショップを地元・千葉にオープン予定。日々自身のスタイリングを中心に更新しているInstagramでは7万人以上のフォロワーを得ている。
デニムを生かしたカラーテクで
アメカジの玄人感を演出
「直営店で働くようになって初めてLeeに触れたんですが、そのときはウォバッシュのペインターパンツとアーカイブの大戦モデルをずっと穿いていました。ファッションに目覚めたのは15歳くらいですかね。そこから地元のアメリカンレプリカショップを行き始めて。当時、木村拓哉さんに憧れてアメカジに染まりましたね(笑)。他にもストリートやモード、ラグストなど色々と触ってきましたが、最終的にはルーツのアメカジに戻ってきました。今ではインスタだったり、自分のブランドもアメカジをベースに期待してくれている方がたくさんいらっしゃるのでこの軸を大切にしたいですね。今日のコーデも普段通り。70年代をイメージしてデニムが映える色使いを意識しました。身長を気にしていたのでデニムはジャストが基本です」
AMERICAN RIDERS 202
ベルボトムジーンズ
往年のライダースジーンズをメイドインジャパンで現代風にアレンジ。
デニム本来の質実剛健さを求めた無骨な14.4オンスのスペシャルデニムを採用。
逆つり鐘型のヒップポケットとそこを飾る「レイジーSステッチ」は、レザーパッチと並ぶブランドのアイコンです。
本田博仁さん (43歳/165cm) スタイリスト
映画『バトルロワイアル』などに出演した俳優としての経験と、その後セレクトショップに勤めた経験とを生かして転身した異色のスタイリスト。アシスタントにはつかず独学で学んだ独自の感性でモードからストリートまで幅広くスタイリング。雑誌、CM、広告、ドラマなどを中心に活動中。
レングスを選べるからこそ
身長を気にせず自分らしく穿ける
「仕事柄、Leeのモノ作りの本格さやシルエットの良さはずっと知ってはいたもののあまりプライベートで着用する機会がなく…。また、身長のこともあってブーツカットはあまりその美しいシルエットを生かせないと思っていたこともあって避けていたんですが、今回レングスを選べるものをトライできるとのことで楽しみにしてきました。普段からパンツはジャストサイジングを心がけているのですが、今回穿かせてもらったのもジャストで正解でしたね。レングスも自分にぴったりで膝から緩やかに広がるシルエットをしっかりと味わうことができました。裾にボリュームが出るので、足元はローテクシューズで同系色にまとめてシンプルに。逆にトップスはオーバーサイズで主張の強めなものを選んでコントラストをつけました。身長で諦めていた人にぜひおすすめしたいですね」
【選べるレングス】【73cm】
ブーツカットパンツ
これまでのデニム製造のノウハウを生かしたブーツカット特有のお悩みを解決してくれる有望株。
レングスによって諦めていたブーツカットを、2つのレングスから自分のスタイルやサイズに合ったものを選ぶことができる仕様。
ポリウレタン混紡で穿きやすさも抜群です。
水澗 航さん (41歳/180cm) アタッシュドプレス主宰
ドメスティックブランド、アタッシュドプレスを経て、2014年に国内を中心としたメンズファッションブランドのPRを行う「STUDIO FABWORK」を立ち上げ。その後、ユニセックス、ウィメンズ、プロダクトを取り扱う「ENKEL」を2020年に開始。それぞれの主宰を務める。
いつもの感覚で穿くことで
与える変化がスパイスに
「初めてLeeを穿いたのは中学生の頃ですね。当時少ないお小遣いでLeeやWrangler、EDWINを頑張って買っていた思い出があります。ブーツカットは1990年代後半から2000年代始め。なんとなくですが“少しダサい”といった印象があったアイテムでしたが、僕は音楽、特に欧米のロックに影響を受けることが多くて、ザ・ストロークス(バンド)が穿いている姿を見て“かっこいいな”って思ったんです。それから2000年代の日本のドメスティックブランド、例えばN.Hoolywoodでも出ていたり一時人気になりましたよね。僕の世代だとそのイメージが強いですね。今回久しぶりに穿きましたけど当時を思い出す感覚もありつつ、新鮮さもあって。極端にフレアしているタイプではないので、普段通りに使うことで少し変化を与えるのにうってつけだなと感じました」
WEB限定 フレアーデニム
緩やかに広がるフレアシルエットに、センタープレスを施すことですっきりとした印象へと導いてくれます。
染料の異なる色落ちがしにくいデニムを採用することで穿き込んでも長く同じような風合いを楽しむことが可能。
ユニセックスで着用できる合わせやすさも魅力です。
野中 東さん (53歳/178cm) 絵本作家
飲食業やアパレル業を経て、2017年より絵本作家としての活動を開始したという異色の経歴を持つ野中さん。作品としては2018年に『サイエンスとアート』、2022年に『トバナイトリ』を発表している。また絵画や書、アップリケ作品などを展示した個展も開催しており、好評を集めている。
細部にこだわり構築することで
オトナの自分らしさへ直結
「Wranglerはやっぱり13MZWのイメージですね。50年代のシルエットが特にきれいで動きやすい上にデザインがスタイリッシュ。私が穿いていたのは25歳から30歳くらいにかけて。当時はなぎら健壱さんが穿いている印象が強かったですね。自分らしさを貫いているオトナというのでしょうか。そんな姿に憧れましたね。今回のモデルはそれ以来のブーツカットですので20数年ぶりになります。昔だとペコスブーツやウエスタンブーツが妥当でしたけど、コスプレにしたくないですしリアルクローズとしては今ならレースアップが気分ですね。現代的なカウボーイを意識してコーディネートしたので、ヌバックのベストで無骨さを入れつつ、ライトなカットソーくらいがちょうどいいかなと」
77MWZ BOOT CUT/ブーツカット
デニムパンツ
7本のベルトループやウォッチポケット、ヨーク高仕様などWranglerオリジンの仕様が盛り込まれた一本。
クラシカルな雰囲気漂うフレア感が特徴の王道ブーツカットシルエット、そして伝統の13オンスのブロークンデニム素材を使用。
名作13MWZと双璧をなす定番モデルです。
添田和宏さん (42歳/180cm) スタイリスト
雑誌、ブランドルック、俳優、広告と幅広く活動する敏腕スタイリスト。EDWINバイクデニムのスタイリングも担当するなど、デニムアイテムへの知識も豊富。最近では、ブランドのYouTubeやテレビ番組「ヒルナンデス」などでスタイリストとしての知見を披露するなど活躍の場を広げている。
デニムブルーを全身に纏い
統一感とこなれ感を両立
「個人的に骨太な体型が気になっているので、フレアやブーツカットは自分には不向きだと思ってあまり着用することなくここまで来ていました。世代としては学生時代に古着ブームがあったときにブーツカットが流行っていたんですよね。そのイメージが強いです。今はストレートやワイドパンツが主流で僕自身もその辺が多くなっていたんですが、今回Wranglerを穿けるということで新鮮な気持ちと期待を込めてスタイリングしてみました。今回のモデルがセンタープレスが入っているタイプだったのでシャツとジャケットでキレイめを意識しつつ、デニムブルーのトーンで揃えてこなれた雰囲気を目指しました。ゆるいデニムだと土臭くなってしまいがちですが、シルエットの美しさによって全体的にうまくまとまったのではないでしょうか。個人的にはトーンを合わせることでより生きるデニムなのではと思います」
フレアデニムパンツ
70年代のフレアパンツをベースにオリジナルディテールを踏襲。
やや深めな股上に設定し、裾に向かって程よくフレアするシルエットのため、スタイルアップ効果が期待できます。
デニム生地特有のねじれを解消したブランドの真骨頂であるブロークンデニム素材を使用。